心臓の血管が石化? ~冠動脈の石灰化と治療についてのお話~
2023年12月26日
冠動脈は心臓の筋肉(心筋)を栄養している血管で、冠動脈が詰まってしまうと急性心筋梗塞を発症したり、冠動脈が狭くなってしまうと運動時に胸の痛みを生じる狭心症を発症したりします。これら冠動脈疾患の原因としては冠動脈の動脈硬化が主なものであることが知られています。動脈硬化は段階的に進行していきますが経過のひとつとして、①血管壁の細胞増殖・脂質の蓄積、②血管の壁の内部での細胞の壊死、③血管の壁へのカルシウムの沈着(石灰化)、というものがあります。
図1は心臓CT検査の画像で、冠動脈が1本詰まっており閉塞部分の周囲に石灰化を認めます(CT画像で真っ白に見える部分)。こうした詰まったり、狭くなったりした冠動脈に対してカテーテル治療を行いますが、一般的な治療の流れとして、冠動脈に細い針金を通過させて、風船で拡げ、ステントという金属製の筒を入れて心筋への血流の改善を目指します。しかし、病変に石灰化があると、病変が石の様に硬くなっているため風船で拡げられないという事がしばしば起こります。そのため石灰化病変の治療についてはもうひと手間必要なことがあり、従来はドリルのような器具を使って石灰化した部分を削って風船で拡がるようにするという作業が必要でした。
しかし、近年、「ショックウェーブバルーン」という器具が使用可能となり石灰化病変の治療に大きな変化が生まれています。
図2はショックウェーブバルーンの治療原理を図示したものです。Aのようにショックウェーブバルーンを石灰化病変で拡げて、B、Cのようにバルーン内のエミッターという部分から衝撃波を生じさせます。すると石灰化を破砕する事ができ、Dのように風船で病変が拡張可能となる、という原理の治療器具です。従来の石灰化に対する治療器具と比較して、使用法が簡便で比較的安全性も高いと言われており、石灰化病変の治療法として大きな期待がされている治療器具です。当科では比較的早い段階からこの治療器具を導入しており、既に10例以上の治療実績があり良好な治療成績が得られています。
今回石灰化病変の治療の進化について書いてきましたが、どんなに治療法・器具が進化しても、治療が必要な患者さんを見つけ出せなければ意味をなしません。体を動かす時に胸の違和感を感じている方、冠動脈の治療を受けたご家族がいらっしゃる方、動脈硬化を起こし易いご病気(糖尿病、高血圧症、脂質異常症など)を治療中の患者さんは、かかりつけの先生にぜひご相談されて下さい。
(循環器内科 副部長 古閑 靖章)