10月に精神医療センターがオープンします

大分県立病院ニュース

2020年07月02日

県民ひとりひとりの「こころ」と「からだ」に寄り添い 精神科救急医療機関として安全・安心を届けます

 10月に精神科救急医療・身体合併症医療に特化した県内唯一の施設として大分県立病院精神医療センターを開設します。36床の閉鎖病棟で精神保健福祉法のもと診療が行われる総合病院併設の精神科施設です。これまで大分県では精神科救急の受け皿に乏しく、長年、大きな問題となっていましたが、精神医療センターの開設により、精神科救急医療が大きく前進することとなります。開設に際して県民の皆さんに3つのことをお伝えさせていただきます。
 まず1つ目は、精神科救急(身体的な問題などなく精神科のみで完結できる救急)としての役割です。精神医療センターでは十分な個室と24時間体制で対応できる医師をはじめとしたスタッフを揃え、精神科救急事案に対応したいと考えています。また身体合併症については、精神症状が軽症の場合は、今までどおり一般病棟に入院していただき、我々精神科医が一般病棟へ往診します。しかし、精神症状の濃厚な治療も同時に必要な方は、精神保健福祉法のもと精神医療センターに入院していただき、身体合併症を診療する先生方と密に連携しながら治療していきます。
 2つ目はセンター開設後の外来診療体制についてです。原則、センターで対応する患者さんは身体的な問題を抱えている方や周産期の方に限らせていただきます。原則、精神科のみに通院している外来患者さんは、積極的に地域の診療所や病院を紹介させていただきます。
 3つ目は若い人たちへの教育研修機関としての役割です。精神科医療に興味のある医学生や研修医の方、また看護師や精神保健福祉士、公認心理師などたくさんの職種の方が充実した研修を受けられるような施設にしていきたいと考えています。令和3年度からは初期研修医、専攻医も受け入れできるよう準備を進めています。
 精神医療センターは、地域の医療機関のみならず、関係機関(保健所、消防、警察など)とも密に連携を行い、病状が安定した患者さんは「かかりつけ医」又はご自宅近くの病院や診療所で治療していただくという大きな流れを作っていきたいと考えています。
 最後になりますが、開設まで残り3ヶ月を切りましたが、万全の準備を行って10月の開設を目指し、大分県の精神医療の中枢としての役割を担い、県民の皆様に貢献できるようにしていきたいと思います。関係者の皆様にはさらなるご支援を賜りますよう、今後ともよろしくお願いします。

(精神医療センター準備室 室長  兼精神神経科部長  塩月一平)

施設概要

名称 大分県立病院精神医療センター
構造 鉄筋コンクリート2階建
1階 外来/2階 病棟
延床面積 2,994㎡
病床数 36床
【内訳】保護室8床、HCU2床、身体合併症個室6床(うち陰圧室1床)、個室8床、多床室12床(4床×3室)

理念

 大分県立病院本院の基本理念(奉仕、信頼、進歩)に加え、患者さんの人権を擁護し、安全な精神医療を提供します。

経緯

1959(昭和34)年 大分県立病院に神経科を新設
1975(昭和50)年 精神神経科に改称
1992(平成4)年 新病院完成 大分市豊饒(現在地)に移転
2008(平成20)年 精神神経科外来を閉鎖
2010(平成22)年 精神神経科外来を再開
2015(平成27)年 大分県が「県立精神科基本構想検討委員会」を設立
2016(平成28)年 上記委員会が「県立精神科基本構想」を知事へ報告
2019(平成31)年 精神医療センター準備室を新設
2020(令和2)年 精神医療センター竣工

基本方針

  • 他施設では困難な精神科医療への対応

    24時間365日、他施設では対応困難な精神科急性期患者や身体合併症患者に対して、本院の身体科と一体となって、短期・集中的治療を行います。

  • 患者中心の医療

    精神保健福祉法を遵守し、患者さんの人権に十分配慮した医療を行います。

  • 院内外との連携

    本院の身体科や院外の医療機関、関係機関と連携し、患者さんの早期の社会復帰を目指します。

  • 健全な経営

    在院日数や在宅復帰率、再入院率などの指標を把握しながら健全な経営に努めます。

精神医療センターの特色

1.精神科救急医療について

 精神疾患によって、自分自身を傷つけたり、他者に危害を加えるおそれが差し迫っている状態を「精神科救急状態」といいます。
例えば、

  1. 幻覚や妄想、興奮、支離滅裂な言動等があり、通常の生活を送ることができない状態
  2. 幻覚や妄想に左右され、他者に危害を及ぼすおそれがある状態
  3. 抑うつがあり、具体的に自殺の方法を考えたり、そぶりがみられ、自傷行為が切迫している状態

などがあげられます。
 当センターでは、他の医療機関では対応が困難な「精神科救急状態」の患者さんを受け入れます。夜間休日においても、日当直医師を配置し、精神科救急医療に24時間365日対応できる体制を整えます。

2.精神科身体合併症について

 身体疾患をもちながら興奮や意思疎通が図れない、死にたい気持ちが続く等の精神症状のため一般診療科では対応が困難な状態をいいます。
例えば、

  1. 脳炎、脳挫傷などの急性期で興奮や異常行動がある状態
  2. 自殺企図後で外傷があり、死にたい気持ち(希死念慮)にとらわれている状態

などがあげられます。
 身体疾患の集中的な治療が必要な場合は、本館の救命救急センターや一般診療科に入院していただき、精神科医師が入院病棟に出向き、患者さんが身体疾患の治療に専念できるようにサポートします。身体疾患が落ち着いたものの精神症状が強い場合は、当センターに入院していただき身体科医師と共同で治療にあたります。常に身体科医師と連携しながら、精神科救急・身体合併症診療を迅速に行います。

3.療養環境について

 完全閉鎖病棟ですが、安全と快適な療養環境に配慮した明るくあたたかな空間作りに努めました。

精神医療センターの診療について

入院

 精神医療センターへの入院には精神保健福祉法上の手続きが必要です。入院時にご家族(配偶者、2親等以内の血族)の同伴をお願いいたします。家族がいない方はご相談ください。法に基づいた下記のいずれの入院形態にも該当しない場合は、入院できません。

任意入院 ご本人の同意のもとに成立します。
医療保護入院 精神保健指定医の診察の結果、入院治療が必要と判断された場合に、ご本人からの同意が困難な場合、ご家族の同意のもとに成立します。
応急入院 精神保健指定医の診察の結果、入院治療が必要と判断された場合に、ご本人・ご家族の同意が得られない場合、72時間を限度に行われます。
措置入院 精神障害のために自傷他害のおそれがある場合で、知事の指示による2名の精神保健指定医の診察の結果、措置入院が必要と判断された場合に、知事の決定により行われます。

外来

 大分県立病院は、地域の病院・診療所(クリニック)からの紹介に応じて、重い病気や深刻なけがのために、より高度かつ専門的な医療サービスを必要とする患者さんを受け入れています。精神医療センターにおきましても紹介による患者さんを診療いたします。
 新患・再来とも予約制です。初診時はご家族の同伴をお願いします。治療後、患者さんの病状が安定した場合、日常の健康管理や体調の変化を気軽に相談できる身近な主治医である「かかりつけ医」や地域の医療機関に治療の継続を依頼させていただきます。

地域との連携

 精神医療センターでは、精神科の急性期や身体合併症の患者さんを短期・集中的治療し、できるだけ早く地域に戻れるよう、医師、看護師、薬剤師、精神保健福祉士、公認心理師などさまざまな職種が入院時から関わり、質の高いチーム医療の提供を目指します。地域の医療機関をはじめとして、保健所、訪問看護ステーション、介護・障害福祉の相談窓口や福祉サービスを提供する事業所など、地域のさまざまな支援機関と積極的に連携します。
 地域の医療機関の皆さまにおかれましては、当センターとの連携について、ご理解とご協力をお願いいたします。

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