手術室の新型コロナウイルス(COVID-19)感染防止対策
大分県立病院ニュース
2021年01月28日
新型コロナウイルスの猛威はとどまるところを知らず、我が国でも感染患者が急増しています。日本外科学会と日本医学会連合では、慢性疾患、がん、外傷など「新型コロナウイルス感染症以外の一般の傷病者」に対しても、健全な医療供給が継続されることがきわめて重要ですが、「新型コロナウイルス感染症では、無症状もしくは軽微な症状の陽性患者が多数存在し、症状が乏しい場合、術前の問診および診察だけで感染者を除外することは難しく、もし不顕性感染患者に対して、全身麻酔下に手術を行えば新型コロナウイルス感染症による重篤な術後合併症を惹起することが予想される」と指摘しています。海外では、腹部の一般手術において「術後に新型コロナウイルス感染症を発症し、死亡した事例」が報告され、我が国でも「外科手術後に新型コロナウイルス感染症が陽性であると判明した」事例が報告されています。
さらに、全身麻酔管理のための気管挿管や抜管操作はエアロゾル飛沫を発生しやすく、飛沫感染リスクの高い新型コロナウイルスは血液や肝臓・消化管などの「呼吸器以外」にも存在し、これらへの電気メス処置において容易に飛沫を発生し、医療従事者への2次感染にもつながることから、「手術を端緒とする新型コロナウイルス院内感染がひとたび発症すれば、病院機能は停止し、地域医療崩壊の引き金となる」と警鐘をならします。 そこで、当院では新型コロナウイルス感染防止対策としての術前検査実施基準を制定しています。
1.予定手術患者の場合:PCR検査
- 術式の飛沫発生リスクに応じて予定手術日の数日以内にPCR検査を実施し、陰性を確認し手術する
- レベル1(危険度最高度):耳鼻科(鼻内視鏡手術など)、脳外科(経鼻的下垂体手術)
- レベル2(危険度中等度):外科(食道がん)、呼吸器外科、口腔外科、術後人工呼吸器管理が必要な手術
- レベル3:その他の手術
- 飛沫発生リスクの低いレベル3の手術であっても新型コロナ感染を疑う呼吸器症状、胸部X線写真で異常がある場合は、麻酔科・感染管理室の判断で胸部CTやPCR検査を検討する
- 新規感染が多発している地域への移動や、感染者との濃厚接触がある場合、14日間待機後に手術を実施するが、待機できない場合はPCR検査を検討する
2.緊急手術が必要な患者の場合
- 飛沫発生リスクの高いレベル1の手術では時間的に可能であればPCR検査を行う
- 術前の胸部X線写真や発熱などの症状で新型コロナ感染を疑う場合、時間的に可能であればPCR検査を実施する
- 新規感染が発生している地域への移動や、感染者との濃厚接触を確認した場合、時間的に可能であればPCR検査を検討する
- PCR陽性が判明した場合やPCR検査の時間的余裕がない場合は、感染防護服の完全装備で手術を行う
一般社会における新型コロナウイルスの感染状況が日々深刻さを増す中、患者さんの健康をお祈り申し上げますとともに、この度の措置にご理解とご協力を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。
(麻酔科 部長 宇野太啓)
※掲載内容の詳細は各科外来・各病棟でお尋ねください。