周術期口腔管理とは ~手術の前後、がん治療中には適切な口腔管理を~
大分県立病院ニュース
2021年02月25日
「周術期」という言葉は簡単にいうと手術日を含めた手術前後の時期を指します。
全身麻酔による手術では、口から気管チューブを挿入します。口腔内には1gの歯垢に1億という非常に多くの細菌がおり、気管チューブを挿入することで口腔内の細菌を肺に押し込めてしまい肺炎や手術後の感染などの重篤な合併症につながるといったリスクが生じます。また、動揺している歯がチューブなどに当たり、飲み込んでしまったり気管内に入ってしまったりする可能性もあります。
同時にがん治療を受ける患者さんの抗がん剤治療や放射線治療にも適応があります。
これらの治療中は免疫力が低下し、健康時にはかかりにくい細菌感染や口内炎が生じて口の状態が悪くなりやすいため、この時期にも口腔機能管理を行うことが重要です。抗がん剤治療では40%の患者さんに口内炎や味覚異常などの口のトラブルが生じるとされています。
口腔内の清掃が十分でない場合には口内炎が悪化しやすく、食事を十分に摂取することが難しくなり、ひどい場合には治療方法、治療時期を変更せざるを得なくなる場合があります。
周術期口腔機能管理で期待される効果〜専門的口腔ケアを受けた管理群とケアを受けていない非管理群との入院日数の比較〜
千葉大学医学部附属病院における介入試験結果
当院では、手術を受ける患者さんが安心して手術やがん治療に臨んでもらえるよう、手術前後、がん治療中の口腔ケアを実施しています。周術期口腔機能管理を行うことで、肺炎・重症感染症などの合併症の予防や入院日数の短縮などの効果が期待されます。手術予定の患者さん、がん治療中で口内炎など口腔内に悩みのある患者さんは歯科口腔外科にご相談ください。
(歯科口腔外科 歯科医師 近藤理江)
※掲載内容の詳細は各科外来・各病棟でお尋ねください。