増えている食道胃接合部がん

大分県立病院ニュース

2021年06月30日

 日本人は世界的にみても胃がんが多く、長らくがんによる死因の1位を占めてきましたが、10年くらい前から死亡数が減り始め(図1)、現在では、大腸がんや肺がんが死因の上位を占めるようになりました。胃がんの発生にはヘリコバクターピロリ菌の感染が大きく関わっていますが、衛生環境の改善により感染率が低下したことが要因と考えられます。

 逆に近年増加しているのが食道胃接合部がんです。これは、食道と胃の境界部周囲に発生するがんのことで、「がんの中心が境界線の上下2cm以内に存在するもの」と定義されています(図2)。大分県立病院でも、最近10年くらいで胃がんの手術を受ける方が減少し、食道胃接合部がんの患者さんが倍増しています。

 食道胃接合部がんの発生には、胃液の逆流が関係しています。胃酸により食道胃接合部の粘膜が傷つき、発がんの原因になります。ヘリコバクターピロリ菌に感染している人が減って胃が健常になり胃酸の分泌が増えていること、肥満気味の方が増えて胃液が逆流しやすくなったことなどで食道胃接合部が傷つきやすくなっていると考えられます。

 食道胃接合部がんの治療は、早期のものなら内視鏡的切除が可能ですが、進行がんになると手術が必要になります。手術は、がんが食道と胃の境界にありますから、食道がんの手術法と胃がんの手術法のいずれの場合もあります。がんの大きさや、がんが食道寄りにあるのか胃寄りにあるのかで手術の内容が異なります(図3)。当院では、食道がんと胃がんのそれぞれの専門医が協力して、最適な治療法を決定しています。

(がんセンター外科 部長 池部 正彦)

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