尿検査の重要性
2021年12月27日
日頃何気なくトイレに流している「オシッコ」ですが、尿には体の中で起こる様々な出来事のヒントが隠されています。特に腎臓病では病気と治療の指標として大変重要です。
1)「尿たんぱく」は腎臓病の将来を予測する目安になります。
尿検査の項目の中で腎疾患と関連が深いのが「たんぱく」「赤血球」ですが、「尿たんぱく」はその量が多いほど将来透析へ至る可能性が高いことが分かっています(図)。ただし、通常の「定性」検査では、実際に尿たんぱく量が多いのか少ないのかは分かりません。「定量」検査を行う必要があり、外来尿検査で「尿たんぱく/尿クレアチニン比」として評価できます。「尿たんぱく/尿クレアチニン比」0.5以上の場合は腎臓内科への受診をお勧めします。
2)「尿への塩分排泄量で」日頃の塩分摂取量が推定できます。
体内に摂取された塩分は、腎臓の動きが正常であれば速やかに尿に排泄され、体内の塩分濃度は一定に保たれます。つまり、尿中に排泄された塩分量を測定すれば摂取した塩分量を推定することができます。現在、日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」で推奨される計算式を用いて、外来受診時の尿検査で「1日の塩分摂取量」を推定することができます。
但し、実際の塩分摂取量を測っている訳ではなく、結果の解釈には注意が必要です。また、塩分が大量の汗や下痢便へ失われる場合は尿への排泄量が変化する可能性があります。何より、「尿への塩分排泄量」にとらわれ過ぎて、他の大事な栄養摂取まで制限しすぎることがないよう注意する必要があります。
上手に尿検査での「1日塩分摂取量」を利用して、適切な塩分・栄養摂取を心がけましょう。
毎月3月の第2木曜日は「世界腎臓デー」に定められており、2020年は3月10日に各地で腎臓病に関連したイベントが開催されます。ご自身の「オシッコ」が健康かどうか、ちょっと考える機会にしてみてはいかがでしょう?
(腎臓内科 部長 縄田 智子)