ロコモティブシンドロームについて 第2報
2022年05月31日
前回の県病ニュース(2020年3月号)でロコモティブシンドローム(略してロコモ)をご紹介しましたが、覚えておいででしょうか?おさらいをしますとロコモとは運動器の障害による要介護の状態、および要介護のリスクが高い状態と定義されており、日本全国で40歳以上の約4,700万人がロコモかその予備軍という研究報告があります。2016年の調査では介護が必要になった理由のうち、ロコモが関係する関節疾患、骨折・転倒を合わせると全体の21.5%にも達しており、認知症や脳卒中と同じように重要な問題になっています。そのロコモ予防には足腰の筋力を鍛えることが大切です。今回は効果的な運動としてのロコトレをご紹介します。
①スクワット
これは下肢筋力をつけるロコトレで、5~6回で1セットを1日3セット行います。足を肩幅に広げて立ち、お尻を後ろに引くように2~3秒間かけてゆっくりと膝を曲げ(膝の曲がりは90度を超えない程度)、ゆっくり元にもどります。
筋力が弱かったり、バランス能力が悪くなってスクワットができない方は、イスに腰かけ、机に手をついて立ち座りの動作を繰り返す運動から開始してください。
②1分間片脚立ち
これはバランス能力をつけるロコトレで、左右の片脚立ちを1分間ずつ行うのを1セットとし、1日3セット行います。転倒しないように必ずつかまるものがある場所で行いましょう。
©公益法人 日本整形外科学会
ロコトレを始める前の注意点として、中高齢者の多くの人で膝の関節軟骨や腰の椎間板に変性がすでに起こっています。筋肉が弱っている状態で、準備なく筋力がカバーできないほどの運動をしてしまえば、逆に関節を傷めてしまう危険があります。各個人に応じた適切な負荷でトレーニングを行い、徐々に筋力をアップしていく必要があります。
筋力は目に見えてついてくるものでもないため、なかなか運動を継続できないと思います。継続するために具体的目標(例えば近くの公園まで無理なく歩けるようになる、近くの山に登れるようになるなど)をもつと良いでしょう。
(整形外科 部長 東 努)