肥満手術対応用ピーズピロー
大分県立病院ニュース
2022年09月29日
肥満者は咽頭周囲の軟部組織が増大することにより上気道が狭くなりやすくなります。また、皮下脂肪や腹部内臓脂肪により横隔膜が押し上げられて胸郭が動きにくくなり、重症の低酸素血症を起こしやすいのです。頚部後屈が困難であり睡眠時無呼吸がある人はバッグマスク人工呼吸の困難や気管挿管困難が予想されます。
肥満患者の手術麻酔において安全な気道管理を行うためには、頭だけでなく上半身も持ち上げて、外耳と胸骨を水平にする“Ramp’'体位にすることが重要といわれています。肥満患者の手術時は、Ramp体位に、頭高位を加えることで、気道開通性、呼吸予備能が改善されます。Ramp体位をとって気管確保を容易にするために米国Dr. Kaiduan Pi により開発されたのがピーズピローで、シングルユースのポリウレタン製です。
胸郭上部・頭部を効率的に上げることにより、マスクを使った人工呼吸や気管挿管を容易にします。また、術後麻酔ケアにおける気道確保も容易にするので麻酔覚醒を安全に行えます。
当院では最高でBMl51.19・肥満度5の超肥満患者の麻酔を経験しました。しかし、高度肥満患者は無事に麻酔や手術が行えても、無気肺の予防などの術後の呼吸管理や、深部静脈血栓症・肺塞栓の予防などが必要であり、正常者よりリスクが高いのは変わりありません。太りすぎないに越したことはないのです。
(麻酔科 部長 宇野 太啓)