コロナ禍に増えた?慢性硬膜下血腫

大分県立病院ニュース

2022年10月28日

 脳は硬膜という膜に覆われており、何らかの理由で脳と硬膜の間(硬膜下腔)に慢性的に血液が溜まり、脳を圧排(出血やその他による圧迫などが原因となり、正常部を押し出すこと)して症状を呈する慢性硬膜下血腫という病気があります。
 主に高齢者がなりやすい病気で原因としては外傷を契機に生じますが、血液をサラサラにする抗血小板剤や抗凝固剤を内服している方、肝臓や腎臓、血液の基礎疾患をお持ちの方、飲酒量が多い方など、外傷以外の原因でも生じます。症状は頭痛や麻痺などに加え、言葉が出にくくなる、物忘れがひどくなるといった認知症に似た症状を呈することもあります。

 治療は溜まっている血腫が少量であれば内服治療でよくなることがありますが、血腫が多いと手術が必要になります。手術を行えば、大抵の方は速やかに症状が改善する病気です。

 コロナ感染症の拡大を機に今までの日常生活が様変わりして、人と人との付き合い方も変わりました。特に高齢者は活動範囲が狭くなり、それに伴い筋力が低下し、日常生活の中でちょっとした外傷を起こすことが多くなったと予想されます。また、他人と接触する機会が減ったことにより、本人の症状を早めに察知することができにくくなっているとも考えられます。
 これからもコロナ感染症に伴う活動制限は完全には無くならないと思います。
 高齢者の方は、普段からできる範囲の運動を心がけていただくことと、ご家族にはまめに様子を見て連絡をとってもらうことが大切です。

(脳神経外科 副部長 下髙 一徳)

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