がんの痩せ「がん悪液質(あくえきしつ)」とは?

大分県立病院ニュース

2023年06月23日

 多くのがん患者さんが、がん治療中に体重減少を経験したことがあるのではないでしょうか?
 がん治療中におこる体重減少の原因としては、①抗がん剤治療の副作用(吐き気や食欲不振、味覚障害など)によって食事量が減ることでおこるものと、②食事はある程度摂れているにもかかわらず体重が減ってしまうものの2つがあると言われています。このうち②の体重減少は「がん悪液質」が原因となっている可能性が考えられます。

 「がん悪液質」では、がん自体から分泌される物質やがんに対する免疫反応によって活性化するサイトカインという物質が原因で、エネルギーの浪費や筋肉量の減少が認められるようになります。そのため以前と同程度の食事が摂れていても体重が減少し、筋力も低下してしまうことで「生活の質」を低下させてしまいます。「がん悪液質」では食欲を亢進させるホルモンの分泌が低下することが分かっており、これはさらなる体重減少の原因となってしまいます。また、やせ細った姿を人に見られたくないという気持ちは、社会的な孤立にも繋がってしまうかもしれません。

 最近では「がん悪液質」に対して一定の効果を示す薬剤が使用可能となっています。しかしながら、薬物療法だけでは効果不十分であり、栄養療法や運動療法などをそれぞれの患者さんの状態に応じて併用することで体重や身体機能を維持・改善していくことが大事であると考えられています。また、早い段階で「がん悪液質」を診断し、早期から治療介入していくことも重要です。

(呼吸器腫瘍内科 部長 森永 亮太郎)

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