急性大動脈解離について
大分県立病院ニュース
2023年05月31日
急性大動脈解離という病気をご存知でしょうか?時折、著名人の訃報でこの病名を耳にする方もおられるかもしれません。当科が担当する疾患の中でも極めて重篤な病気の一つです。
ではいったい、どんな疾患なのか。大動脈は3層(内膜、中膜、外膜)の構造をしていますが、血管に亀裂(エントリー)が入り中膜に一気に血液が流れ出し大動脈が裂けていくという恐ろしい病気です。いままで経験したことのない胸背部の激痛が大きな症状です。裂けた血管は外膜一枚となっておりそこからの破裂、出血による心臓の圧迫(心タンポナーデ)により突然死を起こします(図1)。
裂ける部位でA型(心臓に近い部分)、B型(心臓より遠い部分)と分類しています(図2)。A型は病院到着前での死亡率が61.4%におよび、病院に到着しても24時間以内の死亡率が93%に及ぶと言われており、緊急手術の適応になります。B型は基本的には集中治療室での安静、降圧療法となります。
起こしやすい人は高血圧を放置していた方(検診で言われていたが・・・、かかりつけ医の薬を自己中断した・・・)が多く、特に寒暖差が大きい冬の寒い時季に起きやすくなります。
手術に関しては裂けた部位(エントリー)を取り除き、人工血管に置換するのが基本術式です(図3)。手術は5時間前後におよび、裂けた血管に吻合するため出血、頭の血管を取り替えるため脳梗塞が大きな危険となります。
とにかく発症しないことが一番です。血圧管理をしっかりして、今日は寒いなっていう日は少し暖かくなってからか、暖かい服装で外出してください。
(心臓血管外科 副部長 久田洋一)