浸潤性膀胱がんに対する腹腔鏡下手術に関して

大分県立病院ニュース

2019年11月15日

 膀胱がんは膀胱粘膜から発生するがんです。日本人では人口10万人当たりの患者数が1年間に7.2人といわれています。また男性のほうが女性の4倍かかりやすいともいわれています。

 初発時に多い症状は無症候性肉眼的血尿といって、おしっこをするときに痛みはありませんが色が血液のようになります。また、おしっこの回数が多くなったりおしっこをするときに痛みがあったりして、抗生物質を飲んでも治らない場合に発見されることもあります。 膀胱がんは形と性質から大きく3つに分類され(図1)、表在性乳頭状がんという早期がんで発見された場合の治療経過は悪くはありませんが、浸潤性非乳頭状がんという進行した状況で発見されると転移をすることもあり、治療経過が悪くなることがあります(表1)。 発見されると、まずは経尿道的膀胱腫瘍切除といって尿道から内視鏡を入れ、膀胱の腫瘍を削って腫瘍の悪性度と深達度(根っこの深さ)を診ます。

表1 膀胱癌の5年生存率

ステージ 5年生存率(%)
91.7
73.7
60.7
15.9
全体 75.5

 この検査により、浸潤性膀胱がんではあるが、ほかの臓器に転移がなかった場合(ステージⅡ~Ⅲ)には、治療経過がよくなることを考慮して膀胱を摘出する治療(膀胱全摘除術)が選択されることがありますし、上皮内がんや表在性がんといった深達度の浅いがんでも頻繁に再発するために膀胱摘出になる方もいます(図2)。

  膀胱摘出は、これまで開腹手術で行われてきましたが、近年は腹腔鏡下で行われることが多くなり当院でも施行しています。メリットとしては傷が小さくなる(図3)ので、術後の回復が早いこと、出血量が少なくなることがあり、デメリットとしてはやや手術時間が長くなる傾向があります(表2)。                     
 いずれの手術であっても尿路変向といっておしっこの通り道を作り変える必要があり、この方法に関しても患者さんと相談をしながら決定をしています。もちろん早期発見で膀胱全摘出にならないことが一番ですが、浸潤性膀胱がんになったとしても根治につながる道は残されています。怖がらず、遠慮せずに泌尿器科を受診してください。一緒にベストの道を考えていきましょう。

  膀胱摘出は、これまで開腹手術で行われてきましたが、近年は腹腔鏡下で行われることが多くなり当院でも施行しています。メリットとしては傷が小さくなる(図3)ので、術後の回復が早いこと、出血量が少なくなることがあり、デメリットとしてはやや手術時間が長くなる傾向があります(表2)。

 いずれの手術であっても尿路変向といっておしっこの通り道を作り変える必要があり、この方法に関しても患者さんと相談をしながら決定をしています。もちろん早期発見で膀胱全摘出にならないことが一番ですが、浸潤性膀胱がんになったとしても根治につながる道は残されています。怖がらず、遠慮せずに泌尿器科を受診してください。一緒にベストの道を考えていきましょう。

表2 腹腔鏡下手術と開腹手術の比較

  腹腔鏡下手術 開腹手術
手術時間
出血
術後痛み止めの使用量
食事が食べられるようになるまでの時間 早い やや遅い
入院期間 短くなる傾向 やや長くなる傾向
癌のコントロール ほぼ同等 ほぼ同等

Tang K et al. PLoS One. 2014 May 16:9(5):e95667

(泌尿器科 部長 友田稔久)

※掲載内容の詳細は各科外来・各病棟でお尋ねください。

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