眼内レンズ強膜内固定について
大分県立病院ニュース
2022年08月30日
白内障手術は混濁した水晶体を眼内レンズに置き換えることで視力を改善させます。しかしながら、水晶体を眼内で支持しているチン小帯が脆弱な場合には手術中にチン小帯が断裂し眼内レンズを挿入できないことがあり、この場合には後日改めて眼内レンズを挿入するための手術が必要になります。また、眼内レンズを無事に挿入できた場合でも、脆弱なチン小帯が経年変化でさらに脆弱となって眼内レンズを支えることができなくなると、チン小帯が切れて眼内レンズがずれ(眼内レンズ脱臼:図1a)、視力障害を生じるため手術が必要になります。
眼内レンズを固定する水晶体嚢が使用できないため毛様溝と呼ばれる部位に眼内レンズを固定することで、通常の水晶体嚢内固定(図1b)した場合とほぼ同じ位置に眼内固定することができます。以前は眼内レンズのループと呼ばれる部分に糸を結び眼球強膜に逢着していました(眼内レンズ逢着術)が、最近は眼内レンズのループを固定するトンネルを眼球強膜に作成して眼内レンズを固定する強膜内固定を当院では主に行っています。より安全に手術を行えるように硝子体手術も併用して行っています。
最近では、十数年前に白内障手術を終えられた患者さんの眼内レンズ脱臼に対してこの術式を行う機会が増えてきています。眼内レンズ脱臼だけが原因とは限りませんが、術後十数年経過した後に、見え方に異常を感じた場合には、お近くの眼科で診察を受けていただければと思います。
(眼科 部長 山田 喜三郎)