術後悪心嘔吐(PONV) について

大分県立病院ニュース

2024年05月31日

 PONV(Postoperative nausea and vomiting、ポンブ)とは、手術後、麻酔から覚めたあとに吐き気や嘔吐が起こることをいいます。PONVは術後に発生するもっとも一般的な麻酔関連の合併症で、約30%の頻度で発生するといわれています。高リスクの患者さんでは、その発生頻度は80%にもおよびます。4大危険因子としては、女性、過去のPONVや乗り物酔いの経験、非喫煙者、50歳未満の若年者、術中、の麻薬の使用があげられます。
 PONVは患者の麻酔満足度を低下させ、術後疼痛にも悪影響を及ぼすとともに、時として創部離開、出血などの合併症を引き起こすこともあります。

 PONVは患者さんが苦痛なだけでなく、食事をとるのを困難にするため術後回復力の観点からも対策が重要です。事前にリスクに応じた制吐剤(吐き気止め)の投与を行うことが推奨されています。一般的にメトクロプラミドが使用されますが、もし再度投与するのであれば12時間は間隔を空ける必要があります。以前から抗がん剤の副作用の吐き気に使用されていたグラニセトロンが2021年からPONVの吐き気止めとして保険適用になりました。PONVの高リスク症例では手術終了時に予防的に使用することが推奨されています。

 PONVの経験がある患者さんは、術前診察の際に麻酔科医に言っていただけたらPONVが起きにくい麻酔法(プロポフォールを用いた全静脈麻酔)や麻薬を使用しない術後鎮痛を選択することができます。
 喫煙者はPONVが起きにくいことが知られていますが、喫煙は術後の創感染、肺合併症、脳神経合併症、骨癒合障害などの合併症の危険因子です。また、ニコチンは痛覚過敏を引き起こすので喫煙者は術後の痛みが強いことが報告されていますので喜んでばかりいられません。

(麻酔科 部長 宇野 太啓)

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