不明熱 長い期間発熱があるのに原因がわからない

大分県立病院ニュース

2024年08月30日

 患者さんの中には長期間、場合によっては数か月にわたり周期的にあるいは持続的に発熱があるのに原因がわからず困っている方がいらっしゃいます。
 そのような状態を不明熱と呼んでいますが、この不明熱は最終的にどのような病気と診断されるのでしょうか。一般的には地域の診療所や中規模病院に受診された不明熱の原因は大半が感染症であろうと思いますが、原因がわからない場合は大きな病院に紹介されることになると思います。

 それでは地域の病院では原因不明で、大きな病院に紹介されて受診する不明熱の原因はどのようなものでしょうか。これは右上のグラフのように分類されています。大学病院規模の大きな施設で検査してもなおかつ原因不明の発熱が23%もあることに驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。

 このように今まで原因不明となっていた発熱、特に数か月以上にわたって周期的に発熱がある患者さんの中の一部に家族性地中海熱と呼ばれる病気の方がいることがわかってきました。
 家族性地中海熱は名前の通り地中海沿岸の人たちに多い病気ですが、日本人でも見られます。典型的には数週間から1か月に1回程度38度以上の発熱があり、4日以内におさまることを繰り返します。発熱時には胸やお腹の痛み、関節痛などを伴うことが多いとされていますが、あまり痛くない患者さんもいます。地中海沿岸に住む患者さんたちは家族性という名前の通りご家族に同様の症状がある場合が多いのですが、日本人ではご家族に症状がなく患者さん本人のみの場合もたくさんあります。

 家族性地中海熱の診断はその症状の経過と、発熱時は炎症反応が上がるが発熱がない時は完全に正常化するという特徴的な血液検査のパターン、さらにはコルヒチンという薬が効くかどうかで判定します。
 コルヒチンはイヌサフランという植物から抽出された昔からある薬で、古くから通風という病気に使われていたものです。このコルヒチンを一日1錠から4錠服用することで発熱などの発作が抑えられますが、やめると症状が出ますので長期の内服が必要です。

 長い間、周期的な発熱がある患者さんは原因を調べることができるかもしれませんので、かかりつけの先生に膠原病内科、リウマチ科への受診をご相談ください。

(膠原病・リウマチ内科 部長 柴冨 和貴)

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