放射線治療による緩和ケア

大分県立病院ニュース

2024年11月29日

 緩和ケアとは、がんやがん治療に伴う苦痛を和らげるためのケアのことです。なかでも、がんそのものによる身体的苦痛に対して、放射線治療がお役に立てることが多くあります。
 「放射線」と聞くと怖いイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、レントゲン検査やCT検査と同じように、照射される放射線を感じることはなく、1回の治療自体も10分程度寝台に横になっているだけで終了します。また緩和ケアを目的とした放射線治療の場合、副作用が出てもほとんどが軽度で一時的なものです。
 がんの骨転移による疼痛は、患者さんの生活の質を低下させます。放射線治療は、約60~90%の方の痛みを和らげ、そのうち約20~40%の方で痛みを完全に消失させることができます。治療効果を認めるまでに数日から数週間程度かかりますので、鎮痛薬と上手に組み合わせて放射線治療を行うことが大切です。
 以前は2週間かけて10回の照射を行うことが多かったのですが、最近では1回で照射を終える方法の有効性も報告されています。当院でも1回(1日)のみの照射を行うことが可能であり、患者さんや介護するご家族の負担を減らすことができます。
 また、骨以外(リンパ節や皮膚、筋肉、肝臓など)への転移による疼痛や、がんからの出血、がんによる血管の狭窄、消化管の通過障害などにも放射線治療が有効なことがあります。
 費用面では、放射線治療には健康保険が適用されます。通院のみで治療を終えられることも多いですので、仕事と治療の両立もしやすいです。

(放射線科 主任医師 放射線治療専門医 高田 彰子)

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