大腸がん手術の最前線 ~医療の未来を切り拓くロボット
大分県立病院ニュース
2025年03月26日
近年、大腸がんの罹患率は増加の一途をたどり、2022年の全国統計では死因の第2位 (男性2位、女性1位)になっています。当院においても年間100例以上の大腸がん手術をおこなっており、患者さんは年々増加しています。
大腸がんの手術方法は「開腹手術」「腹腔鏡手術」に大別され、開腹手術は従来のお腹を大きくあけておこなう手術です。一方で、腹腔鏡手術はお腹に1~2cmの小さな穴を数か所あけて、特殊な鉗子を使って手術をおこないます。開腹手術に比べ、傷が小さく、術後の痛みも少ないために体への負担が少なく、早期退院が可能です。
今回、腹腔鏡手術のさらなる進化としてロボット手術支援機器(ダヴィンチ)が導入されました。ロボット手術は従来の腹腔鏡手術に比べて傷の大きさや体の負担はほとんど変わりませんが、より精密な手術ができると期待されています。ペイシェントカート(ロボット本体)にカメラと操作用の鉗子を取り付け、小さな傷からお腹の中へ挿入します。術者はサージョンコンソールに座り、3D画像を見ながら遠隔でロボットを操作し、手術をおこないます(図1)。ロボットの鉗子は通常の腹腔鏡手術の鉗子と比べ、関節がよく曲がり手ぶれをしないため、より正確で繊細な手術が可能になりました(図2)。
ダヴィンチは2023年に当院へ導入され、まずは泌尿器科手術でスタートし、2024年から当科で大腸がん(直腸がん)手術が開始され、現在では婦人科、呼吸器外科も含めた4診療科でほぼ毎日ロボット手術がおこなわれています。ロボット手術では機械操作に医師、看護師を含めた手術室スタッフの経験も必要となりますが、当院では症例数が多く、安定した手術として確立されています。
外科では今後、結腸がん、胃がん、肝臓がんなどにも適応を広げていく予定で、多くの分野においてロボット手術が中心となる時代が来ると考えられます。(上記の手術は患者さんの病状によって、適応の判断が必要となりますので、詳しくは主治医にお尋ねください。)
(外科 副部長 堤 智崇)