食道がんについて
食道がんとは
1)食道がんの特徴
食道がんは高齢の男性に多いがんで、喫煙や飲酒が発がんに関わっているといわれています。進行すると周囲に広がっていき、気管、気管支、大動脈、心臓などの重要臓器を巻き込みます。また食道はリンパ流が豊富でリンパ節転移が多いことが特徴です。例えば、胸の中央にできた食道がんでも首やお腹に高頻度に転移し、 2/3 の患者さんにリンパ節転移を認めます。そのため、がんの中でも、治療が難しく予後の悪いがんと言われてきました。しかし最近では、手術、放射線、抗がん剤などの治療法が進歩し予後も改善しています。
2)治療の原則
食道がんの治療は、進行度(Stage)によって内視鏡による内科的治療、外科的手術、放射線や化学療法(抗がん剤)による治療に分かれます。内視鏡による治療は、早期がんのみに行えます。手術は切除可能な患者さん、つまり、がんが取りきれる病期で手術に耐える体力のある人に行われます。これらの治療ができるのは食道がんの患者さんのだいたい6割くらいで、残りの患者さんには放射線や抗がん剤治療(化学療法)が行われます。また、手術前にがんを小さくする、また、手術で残ったがんを治療するという目的で放射線や化学療法による治療が行われることもあります。
① 食道内視鏡による内科的治療
内視鏡的粘膜切除術は軽い麻酔で行え、入院も数日で可能ですが、早期がんにしか行えません。この意味でも早期発見が重要です。私たちの施設でも内視鏡治療の可能な方には積極的に内科的治療を行っています。
②外科的手術
手術は食道を大部分切除し(図1)、食道の代わりとなる管をつくります。これを再建といいますが、通常、胃を用います(図2)。まず、右の胸から食道に到達して、胸部の食道をリンパ節とともに切除します。つぎに、お腹で、胃の上部をリンパ節とともに切除して、残った胃を引き上げて頸部の食道とつなぎます。この手術は7時間から8時間程度かかります。当科では原則として内視鏡(胸腔鏡、腹腔鏡)による手術を行っています。以前の開胸、開腹手術に比べ、傷が小さく肺や腸への刺激が少ないため手術後の回復が早いという利点があります。
進行がんでは手術の前に抗がん剤治療を行うことが一般的です(術前化学療法)。
③放射線療法、 化学療法(抗がん剤)
食道がんは胃がんや大腸がんよりも放射線や抗がん剤が効くことが多く、ほとんどの人でがんは縮小し、中には完全に消失する人もいます。しかし、治療を行ってもがんが残れば、数か月でまた大きくなってきます。また、いったんがんが消失したようにみえても半数くらいの方で再発します。食道や胃を残せてがんが治れば理想的な治療となりますが、がんが治癒する確率は抗がん剤+手術に劣ります。
<当科での治療成績>
1) 手術例数
2) 食道がん手術成績
診療や手術は、日本食道学会認定医、食道外科専門医が担当します。経験の蓄積により、合併症の少ない安定した手術成績が得られるようになっています。2022年からは適応拡大により、手術後に免疫チェックポイント阻害剤による補助的な治療をおこなうことができるようになりました。