胃がんについて

 胃がんは、胃の壁の最も内側にある粘膜内の細胞が、何らかの原因でがん化して無秩序に増殖を繰り返すことで生じます。大きくなるにつれてがん細胞は胃の壁の中に入り込み、外側にある漿膜(しょうまく)やさらにその外側にまで及んで、近くにある大腸や膵臓にも広がっていきます。がんがこのように広がることを浸潤(しんじゅん)といいます。また、リンパ節や他の臓器にがん細胞が着床してそこで増殖することがあり、それを転移(てんい)といいます。
 胃がんの発生については多くの研究が行われており、いくつかのリスク要因が指摘されています。ヘリコバクターピロリ菌の持続感染のほか、喫煙や食生活などの生活習慣などが胃がん発生のリスクを高めるとされています。
 胃がんの罹患率は40歳代後半以降に高くなります。日本全体では、人口10万人あたりの罹患率は男女とも減少傾向ですが、高齢化のために胃がんに罹患する人の全体数は横ばいです。がんで亡くなった人の数では、2020年の統計で、全てのがんの中で男性では2位、女性では4位です。

<胃がんの治療法選択>

  • T:がんの深さ(深達度)
  • N:リンパ節転移の有無とその範囲
  • M:遠く離れた臓器への転移(遠隔転移)の有無
  • EMR:内視鏡的粘膜切除術
  • ESD:内視鏡的粘膜下層剥離術

 胃がんの治療法については、遠隔転移(M)の有無や深達度(深さ)によってガイドラインで細かく規定されています。
 リンパ節転移(N)がなく、がんの深さがごく浅い(cT1a: M)場合は条件によって内視鏡的切除(EMR, ESD)が選択されます。
 遠隔転移がなく(M0)、がんの深さが粘膜下層より深い例(cT1b,T2,T3,T4)では基本的に手術療法が選択されます。胃を切除する範囲は、がんの存在する部位と病期(ステージ)の両方から決まります。大まかに言うと、がんが胃の出口に近くにある場合は胃の下2/3を切除し(幽門側胃切除)、がんが胃の入り口近くにある場合は胃の上半分の切除(噴門側胃切除)、あるいは胃をすべて切除(胃全摘)します。
 胃がんはリンパ節転移を起こすため、手術は胃だけではなく周囲のリンパ節を一緒に切除します(リンパ節郭清)。早期胃がん(T1)の場合は、リンパ節郭清を縮小する(D1)ことも可能ですが、進行胃がんでは標準的なリンパ節郭清(D2)を行います。
 また、胃がんと診断された時点ですでに他の臓器へ転移がある場合や腹膜へ転移している場合(M1)は根治的手術が不可能で、抗がん剤による治療(化学療法)が選択されます。化学療法によりがんが縮小し手術療法が行われることもあります。
 がんの進行度や患者さんの体力によっては、対症療法のみ(緩和ケア)を選択する場合もあります。

<当院での治療実績>

<当院での治療成績>

 当院では、年間40-50例の胃がん手術を行っています。低侵襲である腹腔鏡手術を全国的にみても早い時期から導入しています。早期がんでは全例腹腔鏡手術を行い、最近では、進行がんにおいても腹腔鏡手術を第一選択としています。
 総合病院である当院では、高齢者や併存疾患を有するかたの割合が高いため、胃がん以外の死亡原因が含まれますが、全国のがん診療連携拠点病院のデータと比較しても遜色ないものでした。

この記事はお役に立ちましたか?

お問い合わせはこちら

気になるキーワードを入力してください。