外科(乳腺)

外科(乳腺)について

当科は乳がんをはじめとする乳腺疾患を扱う専門外科です。
近年、乳がんにかかる女性が増加しており、日本人女性は一生の間に10人に1人が乳がんにかかるという時代を迎えようとしています。一方で、乳がんは早期に発見できれば治癒するものも多く、乳腺専門医は少しでも早く乳がんを発見、診断し、一人でも多くの乳がん患者さんを救うべく日々診療を行っています。当院では、乳腺専門医だけでなく、がん専門看護師、がん専門薬剤師、病理医、放射線治療医など多くの病院スタッフが一丸となって連携し、診断から手術、そして進行・再発乳がんに対する治療やケアまで一貫して患者さんに寄り添っているのが特徴です。

診療分野

「乳房のしこり」「乳房の痛み」「皮膚のへこみ」「皮膚の赤み」「乳首のただれ」「乳首からの分泌物」などの自覚症状があれば乳腺外来を受診してください。
症状がなくても自治体等の乳がん検診を受けることはとても大切です。乳がん検診を受け、精密検査が必要になれば受診して下さい。

診療体制

われわれ外科医だけでなく、病理医、放射線科医、放射線技師、看護師、薬剤師など様々な職種のスタッフの連携で成り立っています。外来化学療法室、がん相談支援センター、セカンドオピニオン外来、緩和ケアチームなども整備されています。さらに2013年からはブレストケアナース(乳がん専門看護師)が常勤するようになり、2019年からはリンパ浮腫看護外来も新設されました。

診療内容

乳がんの検査

乳房の検査の基本は、

  1. 視診・触診
  2. マンモグラフィ(乳房X線検査)
  3. 乳腺エコー検査

の3つです。
検査の前に簡単な問診がありますのでご記入ください。
妊娠の可能性がある方、ペースメーカーのある方、豊胸術を受けたことのある方はマンモグラフィ撮影前に申し出てください。

視触診

皮膚や乳首に異常がないか、乳房は左右対称か、しこりの有無を調べます。
また首やわきのリンパ節の腫れの有無を診ます。

マンモグラフィー

マンモグラフィ検査では、左右の乳房を伸展圧迫して、エックス線写真を撮ります。
痛いことがありますが良い写真を撮るためですので我慢をお願いします。
この検査では乳房内の異常所見の有無を読み取り、1~5の5段階でがんの可能性を評価します。
良い出来上がりの写真を作るための高度かつ専門的な放射線技師の技術とその写真を正確に読み取る読影医の目が必要となります。
当院では学会の認定を受けた専門の放射線技師と読影医が正確な診断に努めています。

エコー検査(超音波検査)

乳腺エコー検査では乳房の上に機械をあて、乳腺内の異常の有無を観察します。
マンモグラフィと違い放射線被爆をしませんので何度でも安心して検査可能です。
数ミリのしこりや、細い乳管中の小さな病変まで捉えることができます。

細胞診検査・組織検査

必要な場合(しこりがある時など)には、採血に使うときの細い針を、エコーで見ながら病変部に刺して細胞を採取し、顕微鏡で調べる「細胞診検査」を行います。
概ねこの検査で良・悪性の区別がつきます。
細胞診で不確実・判定不能のときや検査結果に食い違いがあるときは、太めの針で組織を取ってくる「針生検」やしこりのみを全部とって調べる「摘出生検」という手術が必要になります。

ステレオガイドマンモトーム生検

検診マンモグラフィの普及によって視触診だけでは分からない異常所見(石灰化・腫瘤)が発見されるようになりました。
「石灰化病変」といわれるものの多くは従来のエコー検査や細胞診検査のような方法では正確な診断は非常に困難でした。

県立病院では2007年6月にマンモトーム検査が施行できる装置を導入し、1年間で10~20例前後の手では触れない早期の乳がんを診断、治療してきています。

マンモトーム検査では局所麻酔下を行った後、マンモグラフィを見ながら特殊な器機を用いて針(マンモトーム針)を石灰化部位へ誘導し、組織の一部を吸引採取し、これを顕微鏡で検査し、診断を行います。
最も早期(いわゆる0期)の乳がんの診断には必要不可欠な装置であると考えています。
検診で石灰化を指摘された方がこの検査の対象となります。

乳がんの治療

乳癌の治療には、

  1. 手術
  2. 薬物療法(化学療法・内分泌療法・抗体療法・免疫療法)
  3. 放射線療法

の大きな柱があり、それらを組み合わせて、安全かつ最大の治療効果が得られるようにしています。

乳腺に対する治療

乳がんの治療における手術の役割は「乳房のがん細胞をきれいに取り除く」ことです。
当院では年間200例程度の乳がん手術を行っています。
乳がんをコントロールするには、まず乳房内の原発巣(しこり自体)を取り除かなくてはいけません。
従来はたとえ1㎝の癌でも乳房全てを切除する乳房切除が行われていました。

しかしこれまでの臨床試験の結果、乳房内の癌を残すことなく切除できた場合、乳房温存手術と放射線治療を組み合わせることで乳房切除と同等の治療成績が得られることが分かり、今では当院でも半数近くの方が乳房温存手術を受けています。

乳房温存手術では、乳がんの細胞がしこりの周囲にも広がっている可能性があるため、しこりと周囲の乳腺組織を併せて切除します。
がん細胞がきれいに取り除けたかは肉眼では判断できませんので、『術中迅速病理検査』というがんの取り残しがないかを顕微鏡で確認する検査を手術中に行い、確実にがんの部分を取り除きます。
この検査は病理専門医が担当します。

わきのリンパ節に対する治療

一部の乳がんではわきのリンパ節へ転移していることがあります。
当院では乳がん治療のガイドラインでも推奨されている、“センチネルリンパ節生検”を行い、わきのリンパ節への転移があった場合だけわきのリンパ節を広い範囲とるようにしています。
センチネルリンパ節生検とは、手術中に特殊な色素と器機を使用して、最初に転移するリンパ節(センチネルリンパ節)を特定し、そこに転移があるかどうかを手術中に顕微鏡で確認する方法です。
わきのリンパ節の不必要な切除を避けることで、手術後の腕のむくみ、腕の痛み、可動制限、感染症などの心配から解放することができます。
ただ、この方法が当てはまらない方や、センチネルリンパ節が確実に同定されない方もいますので、医師とよく相談することをお勧めします。

また、手術後に腕のむくみ(リンパ浮腫)がみられる方やわきのリンパ節を広範囲とった方へ、専門看護師がリンパ浮腫の知識提供や生活指導、装具の案内も行っておりますので、お気軽にご相談ください。

整容性も考えた乳房手術

当科では年間200例程度の乳がんに対する手術を標準的な方法で行っております。
手術の方法は、手術後に患者さんが今まで通りの気持ちで生活できることを大切に選択しています。
手術の方法は大きく分けて、乳房温存手術(部分切除手術)、乳房切除手術(全摘術)があり、ご希望の方には再建手術も行っております。
乳房温存手術とはがんの部分だけを切除して、正常な乳腺は温存する手術法であり、40~50%の方が選択されています。しかし、温存手術でもがんの範囲が広い場合は切除する範囲が大きくなり、温存した乳房の形がくぼんだり、乳頭の向きが変わったり、きれいな乳房が残せないことがこれまでの問題でした。また、全摘手術を行うと乳房のふくらみは完全に失われてしまいます。
当院では2010年以降、ご希望の方には、常勤の形成外科医と共同で、乳がん切除後にきれいな乳房が残せるように、再建を行う手術を行っております。がんの切除と同日に形成外科的手術を加えることで安全に形の良い乳房が残せるようになり、患者さんの満足度も上がっております。

乳房再建手術の方法としては、自身の背中の筋肉(広背筋)を利用した方法(図1)や人工物であるバッグを利用する方法(図2)があります。再建手術をご希望の方は遠慮せずにご相談ください。形成外科医と相談し、最適な方法を提案させて頂きます。なお、手術後数年経った方の再建手術も可能ですので、ご相談ください。

また、再建手術まで望まない方には、皮膚に貼り付けるタイプの人工乳房(図3)も扱っております。見本も準備しておりますのでお気軽にお声がけください。

乳がん手術後の補整用品相談会も定期的に行っております。各社年間3回程度当院に訪問し、患者さんに合ったブラジャーやパッドを採寸して相談にのってくれます。予約制になっておりますので、ご希望の方は外科外来までお声がけください。

<当院訪問の業者一覧>
ユコー(株)
ワコールリマンマルーム
マエダモールド
池田メディカルジャパン
ヴィーナス

薬物療法(化学療法・内分泌療法・抗体療法・免疫療法)

同じ乳がんでも一人一人その性質は異なり、なかには手術でしこりやリンパ節を取るだけでは治癒が難しく、 「全身病」としての性質をもつものもあり、体全部にいきわたる薬物療法が必要な場合があります。

術後の再発リスクは人によりさまざまであり、そのリスクをできるだけ少なくするように、色々な治療が行われることになります。

切除した乳がんは病理医によって顕微鏡の検査でどのようなタイプの乳がんか、手術後の追加の治療は必要か、使用するとしたらどのような薬剤が効果があるのかが詳しく調べられます。この結果、その方に合った薬物療法(抗がん剤、ホルモン剤、抗体治療薬など)が選ばれます。
普通は術後に行われますが、手術前にこうした薬物療法が行うこともあります。薬物療法は推奨される治療法を必要回数または必要年月行うことで治療成績の向上が見込まれます。

しかし薬物とくに抗がん剤などではつらい副作用が出ることがあります。
当院では、『外来化学療法室』や『がん化学療法看護師』、『がん化学療法専門薬剤師』など専従のスタッフにより、安全で効果的な治療を行うよう務めています。

再発治療に関しても出来るだけ病気をコントロールし、かつ副作用も抑えながら「長く続けられる治療」を目標に行っています。
ガイドラインに推奨されている標準的な治療の他、全国的に施行されている臨床試験や治験に参加して頂き、新しい治療の追求も行っております。

診療実績

初めて受診される患者さんへ

紹介患者さんはいつでも受け付けております。
平日は毎日、新患の患者さんを受け付けておりますが、予約の再来患者さんが優先になってしまい、お待たせすることも多いです。
水曜日は新患の患者さんを優先していますので、是非ご利用ください。
2020年7月より乳がん検診で要精密検査になった方のために、毎週金曜日の午後に予約枠(電話とWEB)を追加しました。待ち時間が少なく診察を受けることができます。要精密検査と判定された方は下記リンクをご確認の上、予約をお願いします。

外来担当医表

新患 増野 浩二郎ましの こうじろう
増田 隆伸ますだ たかのぶ
増野 浩二郎ましの こうじろう
増田 隆伸ますだ たかのぶ
増野 浩二郎ましの こうじろう
増田 隆伸ますだ たかのぶ
増野 浩二郎ましの こうじろう
増田 隆伸ますだ たかのぶ
増田 隆伸ますだ たかのぶ
再来 増野 浩二郎ましの こうじろう
増田 隆伸ますだ たかのぶ
増野 浩二郎ましの こうじろう
増田 隆伸ますだ たかのぶ
増野 浩二郎ましの こうじろう
増田 隆伸ますだ たかのぶ
増野 浩二郎ましの こうじろう
増田 隆伸ますだ たかのぶ
増野 浩二郎ましの こうじろう
増田 隆伸ますだ たかのぶ

医師の指名はできませんので、ご了承下さい。
※紹介状持参の方へ※
事前に電話予約が必要です。予約をお取りでない方は、待ち時間が非常に長くなる場合があります。

スタッフ紹介

部長 増野 浩二郎

  • 日本外科学会認定 外科認定医・専門医・指導医
  • 日本乳癌学会認定 乳腺認定医・専門医・指導医・評議員
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • マンモグラフィ検診精度管理中央委員会認定 読影認定医

副部長 増田 隆伸

  • 日本外科学会 外科専門医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本乳癌学会認定 乳腺認定医
  • マンモグラフィ検診精度管理中央委員会認定 読影認定医

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